コロニア・ディグニダ

チリに隠された洗脳と拷問の楽園

チリにあったドイツ人のカルト宗教団体です。カルトと聞いたら大体の人は想像がつくと思うのですがこの宗教団体はかなり異質な存在でした。設立から凋落まで約60年の年月を経ているのです。設立者は88歳で死にました。初期は第二次世界大戦後の混乱の中、将来像を描けなくなった人々が救いの手を求めていました。

そこに現れたのがパウル・シェーファー元ナチ兵の男でした。この男はドイツ各地のキリスト教のバプテスト派で説教をして信者を増やしていったのです。

当時の説教の中に

<実を結ばぬものはすべて刈り落としてしまえそうすればすべての実を収穫できるだろう>
<己の中にある枯れたものはすべて切り落とすのだ>
<悔い改め変われ 立ち去り神に許しを請え まだ間に合う>
という言葉がありました。

無駄なもの(考え)は捨てて自分にとって有益となるものだけを考えるのだ。そうすればいい結果が出てくるだろう。という意味ではないかと思っています。

3番目の言葉は信仰心をあおる言葉でしょう。それを聞いた当時の人は「すべての闇が消えた気がした」と言っています。そして「信奉すれば奇跡の証人になれる」とも言っています。

信者を多く集めドイツのハイデという所で2500平方メートル(一辺が50メートル)の土地と小屋を買い信者を住まわせました。

シェーファーはそこで行き場のない子供たちの住む施設を作ると言い信者たちを奉仕させ作りました。ここからカルト集団と性的虐待が始まるのでした。

それはこの男が死ぬ数年前まで続きます。数年後に虐待の被害届が出されこの男は海外に逃亡し各地を放浪して旅をしているとチリにお呼びの声がかかります。

チリの隣町から40キロ離れた国境付近の土地137平方キロメートル(一辺が11.7キロ)を無償でもらいます。ここに信者達を労働力として連れていき奉仕させ各施設を作り始めました。

やがて多くの信者たちがドイツから訪れ町を作ったのです。ここで気づくべき点があります。シェーファー1人ですべてできるのか?出来るわけがありません。

彼は彼に疑いない忠誠をもつ人間を3人くらい置きさらにその下にまた忠誠心の高い人間を配置しその下の階層の人たちを管理する。

こういった階層的構造を作り上からの目と同じ立場の信者の目線でお互いの行動に意識し教えに背く者は悪とされ教えに従うことが最善の生き方だと感じ当然の感情になってしまい異議を唱える者は排除されるような文化になっていた。

また、情報は中から発信し外の情報を得ることは罪だと教え本来あるべき当然の感情や考え方ができず信者全員が同じような思想や行動をしてしまう。

まるで籠の中の鳥と同じになってしまい自由というものが理解できなくなり鳥かごの入り口をあけても鳥は出てこなくなってしまう。

自由が何なのか分からなくなって教団にいるのが普通だと思ってしまう。自由はあったのに教団の教えが正しいの生き方で神の加護を得られると感じてしまった。

シェーファーの言ったこと全てが教団の教えで守らないことは悪だと信じ毎日を暮らしていく。教えに従っていれば神の加護が得られると思い生活するような信者になれば彼一人で集団を操れるのが可能だと感じます。

重職に就いている人に従順に従う信者達。感情はあっても言われたこと以外はやってしまえば耐え難い体罰を与えられます。決まり事を守らなくても体罰を与えられます。フェンスに走る電撃に触れ痛い思いをして二度と近づかない牛のような生活。

信者の言葉に「施設から去れば神から遠ざかる」という人がいました。施設から出てしまえば幸せになれないと思ったのでしょう。支配的な階層構造があり束縛された場所に幸せを感じ毎日を生きていく。

親子は引き離され別々に暮らし親と直接話せません。小さな子供たちの時から教え込んだら完全に教団の考えに染まってしまいます。言われるがままの生き方を数十年信徒達は過ごします。

信徒たちは被害者でもあり加害者でもあります。何故ならば教えに従わないもの達に体罰を与えるからです。この施設はまだ現在でも存在し運営をしています。施設を放棄してドイツに帰ればいいのにと思うのですが簡単にいかないのでしょう。

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